第七話

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第七話

 あれから十四年、私は教育大学に入学して、キャンパスの近くの寮に住んでいる。  この頃はバイトやらレポートやらで忙しくて、お母さんと会うのは一ヶ月ぶりだ。 「もう、あんな高級なお花買ったのなら言ってよぉ、お母さんだけホームセンターの安いもの買って恥ずかしいじゃないっ」  お墓参りの帰り道に、お母さんがこの上ない困り顔で言うものだから、私は吹き出してしまった。 「いいじゃん、要は気持ちが大事なんだから。それにお父さんもお母さんのケチなところ分かってるでしょ」 「もうっ! 里帆っ!」  軽い叱咤が飛んで、いたずらっ子みたいにくすくすと笑った。    すっかり外は暗くなって、足元には少し深い雪が積もっている。お墓参りに行ったのは朝だったが、久しぶりに会えたお母さんがはしゃいだあまり洋食屋さんでお昼を食べたあとに、ちょっとオシャレな喫茶店まで入って優雅なティータイムを過ごした。  いつからだろう、命日にも笑って過ごせるようになったのは。考えても分からないから、私はただ夜空を見上げた。  今夜は綺麗な満月だ。あの日に見た、まん丸の形と同じ。  ねえお父さん、私は元気だよ。お母さんは元気すぎるくらい。  悲しい時もあったよ。苦しい時もあったよ。  でも、毎晩夜空を見上げていたから。  欠けていくお父さんも、半分になったお父さんも、今日みたいなまん丸のお父さんも、全部が、光だったから。  明日も、明後日も、明明後日も、ずっと、ずっと、夜空を見上げるよ。  ねえお父さん、いつも私を照らしてくれて、ありがとう。  あなたはいつまでも消えることのない、私の希望の光。
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