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そういえば、SNSでやりとりする中で、性別については確認していなかった。なんていうか、わざわざ確認するべきことでもない気がして。
わざわざ、確認するべきことだったのだ!
会ってみたいと思ったのは、こんなに気が合う相手は初めてだったから。リアルで会って、ゲームのことや、日常のちょっとした愚痴について語り合える仲間が欲しかった。
それは間違いない。
決してやましい気持ちはない。
とはいえあわよくば、初彼女ができたらいいなぁ、なんて夢想していただけに落胆は大きい。
「はぁ、なるほど。アユミが女の子だと思ってオフ会を申し出たわけか。それは悪いことしたな」
こいつ確信犯じゃないよな、と怪しみつつも、歩の様子からして俺を騙そうとしていたわけではないようだ。
「ええと、ショウ……翔平? なんかすげー落ち込んでるな。お詫びにゲーセンで1回おごってやろうか」
「1回だと。お前、俺を舐めてんのか。3回分はおごってもらわないと傷は癒えねー」
「ゲーセンでOKなんだな。安上がりで助かる」
「今ちょっと俺のことバカにしただろ?」
「……あのさ、翔平。さっきから思ってたんだけど」
「なんだよ」
「翔平ってさ、もしかして……」
え、ナニ。
なんでまじまじ、見てくるんだよ気持ち悪いな。
「タヌキに似てるって言われたことない?」
「は? タヌキ。そんなん言われたことねぇし。どっかの猫方ロボットじゃないんだぞ」
顔か。顔の話なのか。
それともタヌキみたいに鈍臭そうって言いたいわけか。喧嘩なら買うぞこの野郎。
「いや、決してけなしてるわけじゃなくて。なごみ系っていうか……いい意味でさ」
「いい意味でタヌキに似てるって言われて喜ぶヤツがいるかーー!」
可愛い女の子との出会いからはじまるハッピーライフ……なんて物語の中だけの幻想だと、俺は現実に涙した。
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