第1章 アユミちゃんの正体

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 そういえば、SNSでやりとりする中で、性別については確認していなかった。なんていうか、わざわざ確認するべきことでもない気がして。  わざわざ、確認するべきことだったのだ!  会ってみたいと思ったのは、こんなに気が合う相手は初めてだったから。リアルで会って、ゲームのことや、日常のちょっとした愚痴について語り合える仲間が欲しかった。  それは間違いない。  決してやましい気持ちはない。  とはいえあわよくば、初彼女ができたらいいなぁ、なんて夢想していただけに落胆は大きい。 「はぁ、なるほど。が女の子だと思ってオフ会を申し出たわけか。それは悪いことしたな」  こいつ確信犯じゃないよな、と怪しみつつも、(あゆむ)の様子からして俺を騙そうとしていたわけではないようだ。 「ええと、ショウ……翔平? なんかすげー落ち込んでるな。お詫びにゲーセンで1回おごってやろうか」 「1回だと。お前、俺を舐めてんのか。3回分はおごってもらわないと傷は癒えねー」 「ゲーセンでOKなんだな。安上がりで助かる」 「今ちょっと俺のことバカにしただろ?」 「……あのさ、翔平。さっきから思ってたんだけど」 「なんだよ」 「翔平ってさ、もしかして……」  え、ナニ。  なんでまじまじ、見てくるんだよ気持ち悪いな。 「タヌキに似てるって言われたことない?」 「は? タヌキ。そんなん言われたことねぇし。どっかの猫方ロボットじゃないんだぞ」  顔か。顔の話なのか。  それともタヌキみたいに鈍臭そうって言いたいわけか。喧嘩なら買うぞこの野郎。 「いや、決してけなしてるわけじゃなくて。なごみ系っていうか……いい意味でさ」 「いい意味でタヌキに似てるって言われて喜ぶヤツがいるかーー!」  可愛い女の子との出会いからはじまるハッピーライフ……なんて物語の中だけの幻想だと、俺は現実に涙した。
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