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第2章 友達にはほど遠い
「あっはははははは、腹痛ぇわー。マジ最高だなショーヘイ」
期末考査の最終日。
すべての試験を終えて、香嶺高校1年3組のクラスメイトたちの顔は、みな開放感に満ち満ちている。
特に、冬休みも間近とあって、誰も彼もがいつになくそわそわして見える。
そんな気もそぞろなクラスメイトの中で、俺を名指しで爆笑しているのが友人の桜井健吾だ。
先日、SNSを通じて知り合ったアユミちゃん、こと糸尾歩と待ち合わせてしまった出来事を愚痴とともに吐き出すと、思いっきり馬鹿にされた。
(こいつに話したら、まぁこうなるだろうとは予想してたけど)
この男は言動から察するに、俺のことを下に見ている。翔平なら何を言っても別に構わないくらいに思っているかもしれない。
災難だったな、と少しでも同情して欲しいと望んでしまった自分が間違っていたようだ。
健吾、お前は本当に俺の友達か、と問いただしたくなる。
〝友〟という漢字は、「手と手を取り合う」形から成り立っているという。決して、笑いながら人の傷口に塩をすりつける……という象形ではないはずだ。
「それでどうした? デートでもしてきたか」
笑いすぎて涙目の男を見ていたら腹が立ってきた。
「誰がデートなんかするか。女の子だったらそりゃあ映画とか、カフェとか……いろいろ計画してたけど! ぜんぶ崩れ去ったわ。あ、でもゲーセンには行ったかな」
しかもそれなりに楽しく遊んでしまった。
最初こそ歩に勝手に腹を立てていたのだが、俺の怒りは長くは続かないのだ。
他に楽しいことがあれば、すぐそちらへ関心が移ってしまう。だから仲間内では、阿呆だ単細胞だの馬鹿にされるのだ。
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