第2章 友達にはほど遠い

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 キャラ。キャラって高校生活を送る上でかなり重要だ。あいつは、ああいう奴だから、と一言で納得させられる魔法の言葉なのだ。  良きにつけ悪しきにつけ、俺たちはその(から)をまとうように生きている。そして俺はその生活がたまらなく息苦しい。 「てか翔ちんは冬休み、サッカー部の練習ないの?」  散々ぶうたれていた狩野が、ようやく話題を変えた。ただ、その矛先が俺に向かってくるのは勘弁して欲しい。 「夏に退部した。ってこれ、前にも言ったろうが」 「狩野はどうでもいいことは、すぐ忘れるからなぁ」  健吾が突っ込む。  どうでもいいなら放っておいてくれないか。   「辞めんの早過ぎだろぉ、翔ちんの根性なし。なあなあ、どうして辞めたの。練習についてけなかったとかっ?」  狩野は好奇心の権化になって、身を乗り出してくる。本当に嫌らしい。俺が触れて欲しくない話題に、どうしたって首を突っ込まずにはいられないのだ。  別に練習について行けなかったわけじゃない。そう反論したかったが言葉にならない。  中学のとき、俺はサッカーがそこそこ上手かった。ポジションはFW、足の速さには自信があった。  その延長線上ーー高校に上がれば、みんな何かしら部活動に入るものだと思い込んでいたから、深く考えずにサッカー部へ入部した。  結果、中学時代のサッカー部以上に厳しい上下関係と、幼稚な足の引っ張り合いに嫌気がさして辞めてしまった。    好きだと思っていたサッカーが嫌いになりそうだった。俺自身の過去を否定されそうな、そんな危うい感覚を覚えた。  心が折れても努力できる人間だけが上にのぼり詰めるのだとしたら、俺にはきっと向いてない。そんな言葉で予防線を張らずにはいられなかった。  向いてない。俺より背が高くて、センスがあって、フィジカルが強い奴が大勢いてーー。嘲りや舌打ちに、自尊心が傷付けられるのが苦痛で仕方なくてーーどの言い訳も考えれば考えるほど、自分自身が惨めに思えてならなかった。
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