第2章 友達にはほど遠い

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 誰もいない自宅は驚くほど冷え切ってい た。父親と母親は仕事で、18時を過ぎなければ帰ってこない。二つ下の妹は塾に行っている。  電気をつけるのも億劫で、靴を脱ぎ捨てて二階へ上がった。    部屋着に着替えることもせずに、自室のベッドに倒れ込む。足元でくしゃくしゃになった毛布を体に巻きつける。頭が重たくて勉強する気にならないし、ゲームも漫画も見たくない。  俺は何も悪くない。  悪くないと思いたい。  けれど、健吾にネタのように歩との一件を話してしまったことは、自分の落ち度に他ならない。 (やっぱり俺の責任じゃないか……)  固く目を閉じて、時計の秒針の音を聞いていると、今日あった出来事がまぶたの裏に浮かんできた。追い出したくても追い出せない。考えたくないことを考えないようにするには、どうすればいいんだっけ……。  どれくらい経ったか。  カーテンの隙間から漏れる赤みを帯びた光で、夕方になったのだと知った。  俺はガッと毛布を剥ぎ取ると、そのまま外へ飛び出した。  外へ出ると、ベッドでぬくぬくとあたたまった身体に冷気が吹きつけてきた。  皮膚は冷たくて痛いのに、心臓がじんと熱い。  あのカフェは何時までやっているのか。    ポケットのスマートフォンで検索するのと、このままカフェへ直行するのと、どちらが早いか。  俺は右手でスマホを握りしめたまま、白い息を吐き出して走った。
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