第2章 友達にはほど遠い

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 数日後、再びカフェを訪れてみた。  この時間帯なら空いていると言われた16時半。さほど並ばずに入店することができた。  席に案内してくれたのは若い女の店員さんだった。俺はそれとなく辺りを見まわして、ため息を吐いた。  コーヒーの独特な舌触りが苦手で、自家製ジンジャエールを頼んだ。底のほうにハチミツがたまっていて、ストローでかき回すとふわっと爽やかなレモンの香りがした。  氷が溶けてはかき混ぜ、溶けてはかき混ぜしながら飲んだ。最後は水みたいな味になった。  そうして飲み終わる頃に(あゆむ)と会うことができた。17時過ぎ、カフェの周囲の植え込み前でケータイをいじっていると、その人の声がした。 「翔平、来てたのか。おれ、夕方はずっと厨房のほうにいたんだ」 「知ってる。テーブル席から見えた」  また来いよとは言われたものの、ただの社交辞令かもしれないと思っていたので、やけに素っ気ない返事になった。  そんな自分に驚いて、俺は慌てて付け加える。 「ここのジンジャエール、ちょっと俺には甘かったけど、まあまあ美味しかったよ。歩もああいうの作ったりすんの」 「簡単なドリンクならな。調理補助もちょこっと教えてもらった。盛り付けとか、食器の片付けとか……。ただ、もともと配膳がメインだから、本格的な料理はやらせてもらえない」 「ふうん。なんかすげーな。もう立派に働いてるんだ」 「何言ってんだよ。高校生でバイトしてる奴なんか、山ほどいるだろ」 「そうかもしれないけどさ。俺なんて、家の手伝いもまともにできなくて、母親に怒られてるから」 「ああ、それめっちゃ想像できる」 「どういう意味だよ」 「翔平は、すげー愛されて育ったんだろうなってこと」
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