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ソフトツーブロックの髪型に、すっきりとした首元、俺より上背がある雰囲気のあるイケメンだった。黒縁のメガネも彼によく似合っていて、品よくスタイリッシュに見える。
Y駅のこんな目立つ場所に立っていたら、スカウトでもされるんじゃないだろうか。いやきっと、一度ならず誘われたことはあるだろう。
そう考えたら、同じ男子高校生として面白くないという気持ちが湧き上がってきて、俺は声をかけたことを後悔した。
が、時すでに遅し。
向こうは俺のことを訝しげに眺めてくる。もうどうにでもなれという投げやりな気持ちで、俺は言葉を続けた。
「ええっと。君のこと、どこかで見たことあるっていうか。校内の廊下ですれ違ったこと、なかったかなぁ……なんて」
何だこの妙な会話の流れは。
男相手にナンパでもしているのかと、うすら寒いものを感じながら、必死に笑顔を保つ。これで無視されたら恥ずかしすぎるだろ。ここに立っていられなくなる。
心の中で冷や汗を流す俺をよそに、イケメンメガネくんは「ああ」とひとつ頷いた。
「すれ違ったかどうかは分からないが、確かにおれも香嶺生だよ。ただ、人の顔と名前を覚えるのが苦手だから……会ったかどうかは分からないな。そっちは一年生?」
ああ、良かった。ひとまず返答があった。
会話が成り立つことに安堵を覚え、俺はつくり笑顔じゃなく、自然と口元を緩めた。
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