第1章 アユミちゃんの正体

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 8月の猛暑にはじまった〝アユミ〟という名のユーザーとのやりとりは、気付けば3ヶ月以上も続いていた。通知画面を開くのが楽しみで仕方なかった。  そんなある日、アユミちゃんのツイートに添えられた一枚の写真に目を留める。  見覚えのある景色だった。 (あれ……。これって、M沢公園の桜の切り株じゃね)  自宅から徒歩15分程度の場所にある、M沢運動公園。そこには少し前まで、見る人を感嘆させるほど大きな桜の木があった。  春になって花を咲かせる前に、幹を切られてしまったけれど。  なんでも、根株の腐朽空洞化が進行し、倒木の危険が高くなったとかで、バッサリやられてしまったのだ。  そのみごとな切り株が、アユミちゃんのツイートに映し出されている。 (もしかして、案外近くに住んでるのか?)  ドキドキしながらダイレクトメッセージで問い合わせてみると、まさかの大当たりだった。  しかもーー。 《ショウさんも高校一年生なんですね。実は自分もなんです》  年齢までぴったり同じだなんて、運命というより他ない。勇気を振り絞って《今度、もし良ければ会って話してみませんか》と誘ってみた。  出会い目的だと警戒されるかなぁと思ったけれど、向こうの返事は意外にも《OK》だった。  
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