恋の形は、ささやかに強欲

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「春になったら、また花見に行かないか?」 「いいわね。どこに行く?」 「運動公園の河川敷がいいんじゃね? 屋台も出るし。そんで、夏は、やっぱ海だな」 「海……」 「あ? なんで、気が進まねぇ感を出してんだよ。去年も行ったろ」 「プールじゃ、だめなの?」 「プールでもいいけどさ。できたら一緒にボードに乗りたいから、俺は海がいい。花火大会に合わせて行くってのは、どうだ? あんた、打ち上げ花火、好きだろ?」 「わかった。花火大会の日程、早めにチェックしましょうね」 「おう、任せとけ。そんで、秋はしっとりと紅葉狩りだ。弁当は今年も俺が作る」 「え? 私が作りたい」 「だーめ。俺の楽しみを奪うなよ」 「じゃあ、一緒に作りましょう。私も、(しゅう)にお弁当作りたい」 「し、しゃーねぇな。鮎佳(あゆか)がそこまで言うんなら、一緒に作ってやらんこともねぇぞ」 「ふふっ。それでお願いするわ。で? 秋の次は、もちろん?」 「もちろん、冬の定番、イルミネーションデートだな。鉄板だけど、それでいい。それがいい」 「そうね。あ、そういえば、去年、行きそびれたクリスマスマーケットに行きたいんだけど」 「あれな。俺の試合日程と重なったもんな。今年こそ、リベンジしようぜ」 「えぇ、必ずリベンジしましょう。さて、およそのスケジュールはこんなものかしら?」 「いーや。肝心の予定が真っ白じゃねぇか」 「いつ?」 「バレンタインデーだよ」 「あぁ、バレンタインね」 「ちょい、待て。なーんで、そんなテンション低い反応なんだよ。バレンタインデーだぞ? 鮎佳の手作り本命チョコ! 本命チョコを二年連続でゲットできる記念すべき国民の祝日を、よくもそんなに雑に扱えるな」 「バレンタインデーは国民の祝日じゃない。あと、本命チョコをそこまで気合い入れて叫ばれると居たたまれないわ」
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