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「ふふっ、冗談よ。洒落のわからない私でもお笑いのボケのタイミングは外さないってところを見せたかっただけ」
「いや、あんた……今の、そこまでのボケじゃないっていうか……本職のお笑い芸人にスライディング土下座して謝ったほうがいい案件っていうか……まぁ、いい。この説明で俺の真意は測れたろ?」
「えぇ、充分に」
「ということは、今、こうしてる時間も?」
「今日のことも、早速、スケジュール帳に書き込めばいいということよね? 昨日のことも」
「その通り。大晦日の夜から元旦にかけて町内の神社で年越しして、二日の今日はちょっと遠出して鎌倉で参拝してきたこともバッチリ書き込んどけ。スケジュール帳、兼、日記なんだから。そんで明日は」
「明日は、アウトレットモールの新春餅つき大会にいそいそ参加、でしょ? 三が日の間ずーっとデートしておいて、どこにささやかな要素があるんだろうと思うけれど、楽しいから良しとするわ」
「もっともっと楽しませてやるから、覚悟しとけ。あと、今日に関しては、俺的にはまだ足りねぇよ。今日はまだキスしてない。ちゃんと家まで送っていくから、俺の部屋でのキスもスケジュール入りさせてくれ」
「あ……」
「キスの回数と時間はもちろん、感想もぜひ書き込んどいてほしいな。頼む」
——全くもう、私の彼氏は本当にわがままで困った人だ。最後の『頼む』の言い方がこの上なく可愛らしかったから、言う通りにしてあげるけれどね。
ささやかどころか、強欲そのもの。貪欲すぎるくらいに貪欲で自分勝手な、一つ年下の可愛いひと。宇佐美柊を、私もとても愛しているんだもの。
【了】
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