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視点の転換
くまのぬいぐるみには思い入れがあります。
幼いころ、くまのぬいぐるみをプレゼントにもらいました。
それが、とても分かりにくい「くま」だったんです。
くまとは思えませんでした。
こげ茶色の剛毛に全身を覆われ、目も耳も、剛毛に埋もれ、辛うじて鼻だけが出ている。全身こげ茶色のゴワゴワした、「なにか」
これ、なんだろう。
しばらく考えて分かりました。
これは「唐揚げだ」
とてもいい色に揚がった、大きな唐揚げに見えたのです。
それ以来、このぬいぐるみは「肉」になりました。
「肉」と命名されたのではありません。役職が「肉」になったのです。
パーティごっこのテーブルには、このぬいぐるみがメインディッシュとして載せられていました。その周辺を、果物や野菜のおもちゃが取り囲み、お客様に招かれただるまさん人形やリカちゃん人形が着席しているのです。
シュール?
いえいえ。私はそれを「肉」と認識していたので、完璧な食材だったのです。
冬ごもりごっこをするときは、その「肉」は備蓄庫(学習机の下)に格納されました。
だって「肉」なんですから
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