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デート
今晩は、崇史さんとデートか。
鏡台の前で琴子さんが入念に化粧を直している。黒のロングドレスに髪を編み込んでアップにまとめた琴子さんは、艶やかで素敵な大人の女性に変身していた。
「やあ、波琉くん、元気?」
扉を二回ノックして、崇史さんが玄関の扉を開ける。ダークネイビーのスーツにベスト、ストライプのシャツにワインレッドのネクタイが合わせてある。高身長でイケメンの崇史さんに、よく似合っていた。
「はい」
そんな崇史さんに見惚れながら、僕は返事をかえした。
「琴子、借りるね」
そう言うと、扉を大きく開いて、琴子さんをエスコートする。
「人を物みたいに言わない」
そう言いながらも琴子さんは怒っていない。
「いってきまーす」
照れ隠しの、ぞんざいな言い方。
「いってらっしゃい」
僕は寂しい気持ちを隠して、お似合いの二人を見送った。
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