琴子さん

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琴子さん

 琴子さんには、五人の彼氏がいる。 一人目は、幼なじみの透くん。 二人目は、社会人で妻子持ちの崇史さん。 三人目は、大学教授の高橋先生。 四人目は、演劇サークルの部長、佐野先輩。 五人目が、サークルの後輩の僕、波琉だ。    僕は琴子さんに、 「琴子さんの一番になりたい」  と、瞳を見て真剣に伝えたのだけど、  琴子さんは、 「波琉は、かわいいね」 「そういうところ、大好きだよ」  と言って、キスで僕の口を塞ぐと、そのまま僕を押し倒した。  琴子さんは、五人の彼氏がいることを隠したりはしない。 「だって、五人とも大好きだからさ、仕方がな  い」  と堂々と言い切る。  それを聞いた多くの人は、眉をひそめて琴子さんの元を去っていったのだけど、そんなこと、琴子さんは、全く気にしていなかった。  来る者は拒まず、去る者は追わず。  そういう人だった。
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