27.大規模電波障害

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27.大規模電波障害

【SIDE:颯】 NHKも民放も全てのチャンネルが、隕石落下地点の上空の映像を映していたが、火の玉が見えた直後に画面がブラックアウトし、映像がスタジオに切り替わった。 「映像切れちゃいましたね。もう隕石落ちたんですかね」 「たぶん落ちたんじゃないかな」 「全然揺れたりしないね。日本は大丈夫だったね」 SNSで情報を集めようとスマホを操作したが、インターネットに繋がらない。 電波の状態を見ると圏外と表示されている。 「俺のスマホ使えなくなってるんだけど、二人のは?」 「私のも圏外ですね」 「私もだめだー」 3人でそれぞれのスマホの電波を確認している間に、テレビの画面が『受信できません E202』と表示された。 「えっ、テレビも消えちゃったよ。どうしたのかな?」 「わからん。ネットが使えなくなった影響かもしれない」 リンがテレビのリモコンで全チャンネルを確認したが、映像が流れているチャンネルは1つもなかった。 湊は用意してあったラジオの電源を入れて周波数を合わせているが、ザーッというノイズしか聞こえてこない。 「ラジオもだめですね。どの周波数も繋がりません。シェルターの中だからかもしれないですけど、いったん家に戻ってみます?」 「そうだな。みんなで戻るのは、まだ危ないかもしれないから、いったん俺だけで戻るわ。リン、クロが付いて来ないように見てて」 「うん、クロおいでー」 シェルターの重い扉を開けて、隙間から扉の外の様子を覗いてみたが、特にシェルターに入る前と変わった様子はない。 恐る恐る扉から出て、階段の電気のスイッチを押すと、コンクリートの階段がLEDの光に照らし出された。 階段を上がって、1階の廊下に出たが廊下も特に変わった様子はない。 リビングに入り電気のスイッチを押そうと思ったが、窓の外が薄っすら明るくなっているので、スイッチを押す手を止める。 リビングの窓から西の空を見上げると、雲が紅く光っているのが見える。 「なんだあれ…」 「あの光なんでしょうね?」 「うわっ!」 突然後ろから声をかけられて思わず叫んでしまった。振り返ると湊がラジオを持って笑顔で立っていた。 「ラジオ忘れてましたよ」 「あっ、ごめん。ラジオ使いに来たのに肝心のラジオ忘れてた」 俺は苦笑いしながらラジオを受け取り、ラジオの電源を入れた。 『先ほど、日本時間の12月5日午後10時47分頃、中央アジアのカザフスタン周辺に小惑星が衝突した可能性が高いと日本政府の発表がありました。小惑星衝突直後から、大規模な通信障害が発生している可能性が高く、日本全域でテレビ、電話、インターネットの回線が繋がりにくい状況が続いております。ラジオをつけたまま家から出ずに、政府からの指示をお待ちください。繰り返します。こちらはNHKラジオ緊急警報放送です…』 ラジオからは同じ内容の録音放送が何度も繰り返されており、これ以上の情報は得られなかった。 「よかった。ラジオは受信できるみたいですね」 「そうだな。ここは安全そうだから、リンとクロも呼んでこようか」 「では、私が呼んできますね」 全員でリビングの照明を点けずに、ソファーに並んで座って、同じことを何度も繰り返すラジオを聞きながら、ぼんやりと紅く光る空を無言で見つめていた。 誰も口を開かず1時間くらいそうしてたが、湊とリンは俺の肩に頭を預けて寝てしまった。クロは俺の足元に来てからすぐ眠ったので、起きているのは俺だけだ。何が起こるかわからないので、俺だけは朝まで起きていようと思ったが、両サイドと足元から伝わってくる体温が心地よくて、俺も眠りについてしまった。
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