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「ドキドキしてる」 瑠奈は息を整えながら、言った。 「普通するよ」 「私のこと好きになっちゃった?」 「好きだよ。でも親友だから……」 「瑠奈が私のことを恋愛の意味で好きなら、離婚しても良いかな?」 「アンタ何言って、っ!」 夕美は瑠奈の花弁の中に右人差し指を入れた。 「身体は受け入れてくれてるよ?」 夕美の指がゆっくりと瑠奈の中で円を描くように動く。 「すごい。指が溶けそう。あ、締め付けてきた!」 「こんなことしてれば身体がイヤでも反応しちゃうよ……」 熱い身体がもう瑠奈自身で制御が出来なくなっていた。 「嬉しい。瑠奈が私で興奮してる。私も濡れちゃうな」 「夕美、恋愛嫌いって言ってたじゃん……」 「嫌いだよ。でも大丈夫。今まで通り会って、そこにセックスが加わるだけだから」 「あ、アンタ、セックスしたいだけなんでしょ! 私じゃなくたって良いじゃん! 旦那さんとしなさっ……!」 下半身への刺激が強くなり、瑠奈の言葉は遮られた。 瑠奈の中に入れられていた指は中指と人差し指に変わり、二本の指が瑠奈の中をまさぐっているのだ。 「あの人、悪くないんだけどね。なんか物足りないんだよ。私のことすごい好きでね。私の言うことを何でも聞いちゃうの」 淡々と言う夕美に瑠奈はイラ立ちが抑えられなかった。 「それの何が不満なのよ!」 「私と付き合う人みんなそう。私のことがすごい好きになっちゃうの。もう、鬱陶しいくらいにね……」 「夕美が何を言っているのかわからない……何がいけないの?」 「私は愛し合いたいんじゃないの。セックスがしたいの」 「じゃあ、なんで結婚したの……」 「結婚してって言われたからかな?」 「……最低」 「瑠奈にはわからないか」 がっかりと言った風に夕美はため息をつくと、指を軽く曲げ、そこを撫でるように動かした。 「ああっ……!」 声が我慢できないほど瑠奈の身体は反応した。 「瑠奈は気持ちいいとそういう声を出すんだね。良いよ。すごく良い」 声が漏れだし夕美の言葉に返事を返すことができず、瑠奈は身体を(よじ)らせた。 「いろんな人に抱かれたし、抱いてもきた。どれも気持ちよかったけど、今が一番気持ちいいかも」 そう言うと夕美は瑠奈を抱きしめた。 「もっと早く、瑠奈を抱いておけば良かったな。十代の瑠奈、二十歳になりたての瑠奈、去年の瑠奈……時を戻すことが出来たら貴女の全てを抱きたい」 瑠奈を抱きしめてる夕美の腕に力が強くなる。 「ねえ、瑠奈。私のモノにならない?」 「はぁっ、な、ならないっんっ!」 夕美は再び瑠奈の中に指を入れた。 瑠奈の身体の反応から波はもうすぐそこまで来ているとわかったからだ。 「意地っ張り」 夕美は右中指と人差し指で中を動かし、親指で器用にクリトリスを刺激した。 「あ、あ、あっ! もう、ダメ! イヤッ!」 瑠奈の身体が反り返ると瑠奈の中に入れている夕美の指がきつく締め付けられた。 「こんなに指に噛みついちゃって」 「うっ……」 身体から力が抜けていったと同時に夕美は指をゆっくりと抜いた。 瑠奈の愛液が夕美の指にべったりと絡みついている。 夕美はそれの匂いを嗅ぎ、舐めた。 「私、この匂い好きなんだよね」 子どもが不貞腐れるように瑠奈は布団にくるまっていた。 「瑠奈それ暑くない? イッたばかりなんだから」 「うるさい……」 「瑠奈は愛液の匂い好き?」 「好きじゃない!」 「そう? エロいこと考えると出てくるなんて最高じゃない? エロいことしてるって実感できて私は好きなんだよね」 「夕美が淫乱なんて知らなかった……」 瑠奈は夕美に嫌味を言ったが、当の夕美はそこにはいなかった。 しばらくすると風呂場からザーという音が聴こえてきた。 シャワーにしては水圧が強い音だ。 「お風呂入れてる。あとで入ろう?」 「……うん」 「瑠奈、カクテル飲む? 私は飲むけど」 「私も飲む」 夕美はソファで瑠奈はベッドの上でお互いバスローブ姿で飲んだ。 先程までの行為が夢であったと錯覚するほどノンアルコールのカクテルが瑠奈には甘く感じた。 瑠奈は夕美の様子をチラチラと伺った。 何事もないように夕美はスマフォの画面を眺め、時折、風呂場を覗きに行くを三回ほど繰り返していた。 「瑠奈、お風呂入れるよ。一緒に入ろう」 そう言われて瑠奈は夕美のあとを子どものようについていった。 アルコールを飲んでいないというのに瑠奈の頭はボーっとしていて、気が付いた夕美に抱かれなら湯舟に入っていた。 「まだ、さっきの余韻残ってるの?」 「別に……」 「瑠奈だって処女じゃないんだから恥ずかしくないでしょ?」 「夕美としたことが問題なんだよ……」 「あー瑠奈って意外と気にしやすいタイプなんだっけ?」 「あと途中で好奇心と性欲に負けた自分が許せない」 「セックスなんて好奇心と性欲でやるようなモノじゃない? それとも、セックスは好きな人としかしちゃいけない人なのかなキミは?」 「当たり前……でしょ……たぶん……」 夕美ほどの経験がない瑠奈は自身が持てなかった。 「私の友達の話なんだけどね。好きな人がいたけど、その人に告白する勇気が無くて自分に告白した人と妥協みたいに付き合った子がいてさ」 瑠奈は黙って夕美の話を聞いた。 「付き合って楽しかったそうだ。セックスもした。でもね、その子の頭の中にはずっとその好きな人がいたんだって。その子は結婚したけど、今でもその好きな人が頭にいるんだって」 夕美の話を瑠奈はいまいち理解できなかった。 「それは怖い話?」 「好きでもない相手でもセックスはできるし、結婚もできるって話」 「でも、嫌いな人とセックスしたわけでも結婚したわけでもないでしょ」 「……そうね」 夕美は瑠奈の胸を軽く揉んだ。 「夕美はそういう気持ちでいろんな人と付き合ってきたの?」 「そうかもしれない。でも、セックスは好き。気持ちよくて、人と繋がれてるって安心する」 「夕美のこと好きで付き合ってきた人たちのこと考えた事ある?」 「あるよ。みんな私のことを大好きだった。私もみんなのことが好きだった」 「今の旦那さんは?」 「好きだよ」 「ずっと一緒にいるのに夕美のことわかんなくなっちゃった」 我慢していた涙が瑠奈から溢れ出した。 知っている人間が別人になってしまったのか、自分が間違っているのかと頭の整理がつかないのだ。 「私の頭の中にはずっと瑠奈がいた」 瑠奈の頬がゆっくりと撫でられる。 「瑠奈を頭から追い出してくれる人を探したの。でも、いなかった。結婚すれば、もしかしたらと思った。でも、瑠奈は私の中に居続けた」 夕美の身体を押しのけ、瑠奈は立ち上がって怒りをぶつけた。 「意味わかんない……恋愛は嫌いじゃなかったの? 私のことは親友だって言ったじゃん! セックスが好きなだけだって言ったじゃん!」 同じように夕美も湯舟の中で立ち上がり、瑠奈の手を引き、再び抱きしめた。 「瑠奈とすれば私の中にいる瑠奈がいなくなる気がしたの。聴こえる? 私の心臓? ドキドキしてるの。セックスしてるときとは違う音……」 「いろんな人と付き合う行動力があるなら私に気持ち伝えることなんて簡単だったんじゃないの?」 「変だよね。自分でもわかってる。こんなことでしか気持ちを伝えられなかった……。ごめんね」 夕美が泣く姿を瑠奈は初めて見た。 いつも気丈で冷静で瑠奈の相談に乗り、夕美は自分と違って何でもできる親友でありながら、別の世界に生きているような人間だと思っていた。 今はとても小さく初めて彼女が自分と同じ人間で自分と同じように悩みを抱えて生きていたのだと実感した。 瑠奈は自分から夕美にキスをした。 「夕美、これで最後だよ」 「……ありがとう」
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