根なし草のカデンツァ

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「そうなの? じゃあ私を撮って!」 「残念ながら、一枚撮るのにバカみたいな金がかかるんだ。今回の取材のために特別に貸し出されてるんで、余計なもんは撮れないんだよ。平にご容赦を」 「ちぇっ、ケチね。でもいいわ、代わりに帝都のこともっと教えて!」  少女はすぐさま機嫌を直して、足取り軽くエイズワースに寄ってきた。 「帝都ではどんな服が流行ってるの? 朝は星パン一個しか食べないんでしょ? 街角じゃ、若い人たちが勝手にダンスし出すんですってね! ねえねえ、どれがホント? どれもホント?」 「ははっ、嬢ちゃんは帝都がよっぽどお好きなんだね。さっきからこっちが質問する暇もありゃしない」 「ええ? だって、質問するコトもないじゃない、こんな田舎!」  エイズワーズの前に、ぴょん、と跳ねるように飛び出て、少女は舞台上のように両腕を広げくるりと回った。 「周りは山で、特産品もない。余った作物と山菜を交易人にお情けで買ってもらって、なんとかやってるような村よ。お二人さん、取材に来る場所まちがえたんじゃない?」
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