『カエルの見た夢』

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『カエルの見た夢』

 昔々、蛙は自分達のことをあまり良く知らなかった。  とても弱くて、醜いと言われるし、嫌われていて、すぐに補食されるか潰されるかして、死んでしまうだけの自分達だと思っていた。  そんな蛙たちの中のとある一匹には、夢があった。  そのカエルは、龍と言う生き物に会ってみたかった。  とても強くて、まるで嵐のように飛ぶ、美しい生き物だと言われていたからだ。   このまま、蛙として生きていくならば、他の何者かになりたかった。  きっとそれは、龍に出会う為に突き進む気持ちが、変えてくれるのではないかと考えていた。  例えば、ちょっとだけ勇気のあるカエル。 それだって、じゅうぶんだ。  ー よし、僕は行くよ。  カエルは、安全な黄緑色の葉っぱの生い茂る田んぼのほとりを出て、旅をすることに決めた。  周りの蛙達は、やめた方が良いと言って止めたけれど、カエルは夢を諦めたくなかった。  カエルは旅を決め、皆に手を振った。  長い長い道のりを、時には鳥に食べられそうになり、時には馬に踏まれそうになり、それでもカエルは旅をやめなかった。  何度も何度もその小さな命は、危険にさらされた。  カエルは逃げる。  すごいジャンプ力で、どこまでもどこまでも跳ねて、飛んで。  カエルは逃げる。  すごいはやさで、スイスイと様々な色の水中を駆けて。  いつしかカエルは、すごいジャンプ力で空を泳いでいた。  すごいはやさで、ピカピカと光る雷をくねくねと避けていた。  - そうか、僕はもう僕に会えていたんだね。  カエルは雨雲を食べると、友達の為に雨を降らせた。  カエルは、叫んだ。  自分達の脚力のすごさを。  自分達の水かきのすごさを。  自分達は美しいと。  自分達は、カッコいいと。  自分達の素晴らしさを、大声で教えた。  そして、まだ見ぬ広い広い世界へと。  カエルは楽しそうに、飛んで泳いで、向かって行った。 50c4869a-539c-4580-a074-c0329805f000
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