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くんくん…
なんだが、鼻にくる匂いだな…
彼は重いまぶたの目を開けると、若い女から、瓶に入った紫色のものを飲まされそうになっていた。
「うわぁぁぁあ!?!?!」
すぐに男は危険を察知して、抑えられていたものを退けて手足の振り回した。
「あ。起きた」
「起きた」
彼は上半身を起こし、髪の長い紺色が似合う服の女性と、髪と肌で耳が変わった形をしている真っ白な美男子に会った。
「・・・ えっと…誰…?」
「こっちが聞きたいよ、君は誰だい?」
彼は焦りながら、ここまでのことを思い出していた。
男の名は、香本 御之(こうもと みゆき)
男子校の進学校に通っている普通科の男子高校生であった。
3月の終業式が終わって春休みに入る時期、下校中に大きな穴に落ちた。それはとても深い穴で何時間叫び続けても底に落ちなかった。彼はだんだんと意識がなくなり、
気がつくと『何かを飲まされそうになっている』状況であった。
これまでのことを彼は二人に説明した。
「なるほどなぁ… 全然分からん」
「・・・ 別の世界」
「は?どういうことだよ」
「見慣れない服装だからだと思うけど… コーモトは、別の世界から来たんだと思う」
「別の世界…」
彼はだんだんとこれは“異世界転移”と呼ばれるものだということにわかってきた。
「私が住んでいるこちらの世界とは違うもの、私が知ってる限りでは、魔族はいなくて人間のみが住んでいる。そして、魔法がない世界…どうしてコーモトがこの世界へきたのか、未だに解明できてない… 残念ながらコーモト、もう元の世界には…」
「そう…ですか…大丈夫です」
「意外とあっさりだな、いいのか?」
「最近あまり楽しくなかったですし…特に戻ったところで変化もありませんから…」
彼は少し悲しいのか無表情な顔をした。
「ところでコーモト、これからどこかへ行くのか?」
「え…?」
「さすがにこのまま放浪ってな訳にもいかないだろ?」
「・・・。」
突然異世界にきて無計画だった彼のことをみた女は言ってきた。
「私ん家に住みなさい」
「へ?」
「は?!」
「どうせ部屋も空いてるし、好きなだけ居たらいいわよ、あ。でも家事はやってもらわないとね」
「おいおい、いいのかよ」
「ナギは近くに実家があるじゃないの」
「そういうことじゃねえんだよ」
「じゃあ…住まわれていただきます!」
「そう。自己紹介しましょう。
私は、メリッサ。よろしくねコーモト」
「香本 御之です。“ミユキ”でいいですよ」
メリッサとミユキは握手した。
「そうそう。この子はナギ、近くのエルフ族の集落の子なの」
「そうなんですか」
「あぁ、一族がメリッサに助けられたことがあるからな」
「ナギはミユキを連れてきてくれたのよ」
「え!ありがとうございます!」
「連れてきたらメリッサが、『新作の目覚め薬』を飲ませようとするからよ、ぶっちゃけあれ死んでたぞ」
「え…メリッサさん…?」
「私からは匂わないのよ、驚きだわ、人間だからかしら」
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