1・百年目の約束

10/17
前へ
/212ページ
次へ
 ママもそのブランドの上顧客のひとりだ。 「薫ちゃん、あなた、世界一幸せよ。こんなすてきな男性のお嫁さんになれるなんて」 「じゃあ、ママがなれば」  わたしはにこりともせず、そう言ってやった。 「ウフフ、できればそうしたいけど」  何言ってんだか。  頬を赤らめているママに、別の意味でため息を()くと、今度はパパが余計なことを言いだした。 「おい、ベルナルドさんと結婚したら、おまえ、パリに住めるんだぞ」  もう、パパ、余計なこと言わないでよ! 「薫さん、パリに住みたい理由があるのですか」  ほらー。  ベルナルドさんがすかさずわたしに訊く。  もう、スルーしてくれていいのに。  目を上げて彼を見ると、問いかけるように少し眉を寄せ、小首を傾げている。  うわっ。  そんな表情すると、麗しさが倍増。  もし、ここにイケメン好きの親友、(かえで)がいたら、「尊すぎるっ」とか言って、シャッター押しまくりそう。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1352人が本棚に入れています
本棚に追加