1・百年目の約束

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「薫、この人はお前の許嫁(いいなずけ)なんだぞ」 「許嫁ってどういうこと?」 「ベルナルド家とうちの祖父さん同士、つまりお前の曽祖父が結んだ約束なんだよ。だからお前がどう思おうと、結婚は初めから決まっていることなんだ」  ……許嫁って。  いったい、いつの時代のこと?  話はこうだ。  さかのぼること、およそ百年。  わたしの曽祖父である久世勲は、明治時代に成功を収めて、莫大な富を築いた織物問屋『近江屋』の三男坊だった。  家を継ぐ必要がなかった勲は、憧れの地イギリスの、オックスフォード大学へ念願の留学を果たした。 (その後、兄がふたりとも戦死したので、結局、勲が家を継いで今に至るんだけど)  そこでルイ・ベルナルドの曽祖父、ピエール・ベルナルドと出会って無二の親友となった。
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