1・百年目の約束

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1・百年目の約束

「イヤ、絶対イヤ」 「まだ言ってるのか」とパパ。 「そうよ、薫ちゃん。いい加減にしなさい」とママもわたしを叱る。  でも、イヤなものはイヤ。 「見合いなんてしたくないって、言ったでしょ!」  都内にある某ラグジュアリーホテルの写真室で、わたしはあらん限りの声をあげて、抵抗を試みる。  パパもママもズルすぎる。  成人式の前撮りとか言って、こんなところまで連れてきて、振袖まで着せて。  騙して見合いをさせようだなんて。 「とにかくわたし、帰るから!」 「薫、いい加減にしろ。今さら中止なんて、お相手に失礼だろう」 「パパが土下座して謝ったらいいでしょ!」  そう言い捨てると、わたしは振袖のまま、出口に置かれていたサンダルをつっかけて、写真室を飛び出した。  もう、本当にひどすぎる。  わたし、まだ二十歳なのに。  結婚なんて、まだ、先の先の、ずーっと先でしょ!  だって……
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