2・パリに来てくれ?

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「今日、ここに来るまではこんなバカげた話、一笑に付して終わらせるつもりだったんだが……」 「ですよねーーー。そんな、とっくの昔に死んでる曽祖父(ひいじい)様同士の口約束なんて、従うことないと思いますけど」    ほんと、ほんと。  まったく遠慮はいらないから、早くきっぱり断って。  今回はご縁がなかったとかなんとか。  ところが、振り返った彼は、とんでもないことを言いだした。   「でも、薫と会ってみて、気が変わったよ」  か、かおるー?  いきなり呼び捨て? 「ただ親の言いなりになっているような、大人しくてつまらない女だったら、さっさと席を立つつもりだったが……」  彼はゆっくりした歩調で一歩、また一歩と間合いを狭めてくる。  それにつれて、後ずさるわたし。  とうとう反対側の欄干まで追い詰められた。
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