2・パリに来てくれ?

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「実に面白い子だね、薫は。気に入った。こうして私たちが出会えたのは神のお導きだよ、きっと」  わたしは左右に大きく首を振った。 「いや、わたしはあなたのこと、ぜーんぜん気に入ってなんていませんから。それに日本人だから神様なんて信じてないし」  彼は憐みをふくんだ優し気な笑みを浮かべながら、さらに耳を疑うような事実を平然と告げた。 「薫がどう思おうと、実は、この結婚、両家ではすでに決定事項みたいだぞ。薫の家の負債をわたしの家で無利子で融資する約束になっているらしい」 「えっ? 負債?」 「きみには知らされてないのか? 薫のお父上の会社、来月、不渡りを出したら倒産と言うところまで追い込まれていると聞いたが」  何それ!? 聞いてないって!!!  わたしは池のほうを向くと、欄干に手をつきがっくりと項垂(うなだ)れた。 「おい、大丈夫か?」  彼が横から覗き込んでくる。
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