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そ、そんなぁー。
気づくと、彼はわたしの真後ろに立っていた。
そして覆いかぶさるように、わたしの両脇の欄干を掴んだ。
……わ、ち、ちょっと!
ホテルの着つけ係の人が、持てる技すべてを駆使して豪勢なお太鼓を結んでくれたおかげで、なんとか密着は免れている。
でも、彼の顔はほぼ真横。
ち、近すぎる。
コロンがまた強く香ってくる。
太鼓のバチで連打されてるみたいに心臓がバクバクしてる。
卒倒しちゃうって、そんなことされたら。
彼は唇をわたしの耳元に寄せ、例の渋イケボイスで囁いてきた。
「薫……私のものになると言えよ。そうしたら存分に可愛がってやるから」
ひえぇぇぇぇぇっ……。
ぞわぞわしたものが背筋を駆けずり回る。
さすが、恋愛の本場フランスから来ただけある。
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