2・パリに来てくれ?

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 そ、そんなぁー。  気づくと、彼はわたしの真後ろに立っていた。  そして覆いかぶさるように、わたしの両脇の欄干を掴んだ。  ……わ、ち、ちょっと!  ホテルの着つけ係の人が、持てる技すべてを駆使して豪勢なお太鼓を結んでくれたおかげで、なんとか密着は免れている。  でも、彼の顔はほぼ真横。  ち、近すぎる。  コロンがまた強く香ってくる。  太鼓のバチで連打されてるみたいに心臓がバクバクしてる。  卒倒しちゃうって、そんなことされたら。  彼は唇をわたしの耳元に寄せ、例の渋イケボイスで囁いてきた。 「薫……私のものになると言えよ。そうしたら存分に可愛がってやるから」  ひえぇぇぇぇぇっ……。  ぞわぞわしたものが背筋を駆けずり回る。  さすが、恋愛の本場フランスから来ただけある。
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