2・パリに来てくれ?

9/14
前へ
/212ページ
次へ
「すまん、すまん。からかい過ぎたな。薫の反応が面白くてね、つい。悪かったよ」  そう言って、頭を下げた。  えっとー……  なんか、拍子抜けしちゃう。  そんなに素直に謝られたら。  自分からは絶対謝らないタイプの人かと思ったのに。  それに、わたしを見る目つきも変わっている。  さっきまでの尊大さは息を潜めて、なぜかとても優しくなってるんですけど…… 「やはり薫は、わたしの従妹によく似ている」 「従妹?」  「ああ。彼女も喜怒哀楽が激しくて、自分の思うままに行動する子でね。小さいころ、いつもヒヤヒヤさせられていたよ」 「その方、今は?」 「残念ながらもうこの世にはいない。事故だった」 「そう……なんですか」    いや、急にそんなこと言われても、どう返したらいいのか……  彼は真剣な表情になって、わたしにまっすぐ視線を向けた。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1352人が本棚に入れています
本棚に追加