2・パリに来てくれ?

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「ここからは真面目な話だ。薫、パリに来てくれないか」    だからーーーーーーっ。   「何度言えばいいんですか? わたしはあなたと婚約する気も結婚する気もさらさらないって」  彼はわたしの顔の前に手を出し、言葉を制した。 「まあ聞けって。パリに来て、婚約者の〝フリ〟をしてほしいんだ。薫が気に入ったというのは本心だが、私もきみと結婚する気はない。残念ながら、子供(ガキ)の相手をする趣味は持ち合わせていないんでね」 「ガキって……」 「ガキ以外の何物でもないだろう? 約束をすっぽかして逃げようとするところなんか、『世界は自分のために回ってる』とでも思っている証拠だろうが」 「そ、そんなこと……」  そんなこと、ありません!  って言いたいところだけど、現場を押さえられているだけに強く否定できないのがくやしい。  でも、あのとき、逃げようとしたのは、特別腹が立っていたからだ。
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