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パパとママにだまし討ちみたいな卑怯な手を使われたのが納得いかなくて。
「でもなんで、婚約者の〝フリ〟なんてしないといけないんですか」
彼はふっと短くため息を吐いた。
「薫を連れて行かないと祖母が納得しないからだよ。とにかく一度言い出したら、何があっても自分の意見を曲げない人なんだ。わたしも父も今回の話には反対したんだが『偉大なる先代、わたくしのお父様のご意志に背くことは許しません』の一点張りでね」
そう言って彼は眉間に皺を寄せた。
すかさず、わたしは彼の真似をして自分の眉間を指し「シワできてますよ」と言った。
彼はその様子を見て、表情をゆるめた。
「ただ祖母は心臓を悪くしていてね。医者が言うには先はそう長くない。それまで、なんとか誤魔化して結婚しなければいい」
……それって、お祖母さんが亡くなるのを待つってこと?
それはそれで、どうかと思うけど。
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