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「薫はパリに留学したいんだろう? その話を聞いたからこそ、こんな提案をしているんだ」
彼はさらにたたみかける。
「失礼だが、留学費用はどうするんだ? 負債を抱えたきみのご両親を頼るわけには行かないだろう。きみの家の借金も学校の費用も滞在費も私が持つ。どうだ? 薫にとって、決して悪い話ではないと思うが」
「確かにありがたいお話ですけど。でも、今日会ったばかりの人に、そんな大きな借りを作るわけには……」
うーん、と思い悩むわたしを見て、今度はまた彼が、さっきのお返しとばかりに自分の眉間を指さした。
「ほらまた、ロダンの彫像みたいな顔になってるぞ」
彼は微笑んで、わたしの肩をぽんと軽く叩いた。
「そんなに固苦しく考えなくていい。こうして出会ったのも何かの縁だ。私にとってきみの留学費用なんてたいしたことじゃない。援助では気が引けるというなら、出世払いということにすればいい」
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