1・百年目の約束

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 それに、このコロンの香り。  なんだろう。  嗅いだことない……  香水フリークのわたしは、知らず知らずのうちに、その男性の上着を手に取って嗅いでいた。  まだ青いレモンと……なに、これ。  とてもさわやかな香りが混じってるな。  グリーンティも香ってるし。  有名なメンズ・フレグランスなら、だいたいどれでも嗅ぎ分けられるけど。 「あのー、このコロン、どこのメーカーのですか?」 「……あのさ」  その人は、自分に抱きついたまま、鼻をクンクンさせているわたしに不審げに声をかけてきた。 「あっ、ご、ごめんなさい」  やっぱりイケボだ、などと思いながら、至近距離のままで見あげた。  限界近くまで首を上げて。  何せ、この人、背が高い。    で、どんな人だったかと言えば……  歳はたぶん30歳前後。  見た感じはモデルっぽい。  ランウェイを歩いていたら、絶対似合いそう。
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