1352人が本棚に入れています
本棚に追加
それにわたしが祖母に敵うはずがない。
会社では絶対君主然として、望みのままに権力をふるっている父ですら、祖母に頭が上がらないのだから。
だから結局、20歳になった薫と会うこととなった。
12歳も年下の薫と。
わたしにとったらほんの子供、まだあどけない少女のようなものじゃないか。
この忙しいときに、なぜそんな無駄な時間を割かなければならないのか。
約束の場所であるホテルに到着したときのわたしは、不機嫌の極みだった。
この腕に薫が飛びこんでくるまでは。
これまで出会ってきた日本の女性は、自己主張しない大人しいタイプの人が多かった。
(なかには、露骨な財産狙いもいないではなかったが)
日本人女性の奥ゆかしさは賞賛に値するものだが、自分のパートナーとしては、物足りない気がしていた。
だから、会うだけは会って、私の裁量で久世家の借金の援助だけ約束して、縁談はなかったことにしてもらおう。
そう考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!