ルイ•サイドⅠ

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 それにわたしが祖母に敵うはずがない。  会社では絶対君主然として、望みのままに権力をふるっている父ですら、祖母に頭が上がらないのだから。  だから結局、20歳になった薫と会うこととなった。  12歳も年下の薫と。  わたしにとったらほんの子供、まだあどけない少女のようなものじゃないか。  この忙しいときに、なぜそんな無駄な時間を割かなければならないのか。  約束の場所であるホテルに到着したときのわたしは、不機嫌の極みだった。  この腕に薫が飛びこんでくるまでは。  これまで出会ってきた日本の女性は、自己主張しない大人しいタイプの人が多かった。 (なかには、露骨な財産狙いもいないではなかったが)  日本人女性の奥ゆかしさは賞賛に値するものだが、自分のパートナーとしては、物足りない気がしていた。  だから、会うだけは会って、私の裁量で久世家の借金の援助だけ約束して、縁談はなかったことにしてもらおう。  そう考えていた。
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