1・超快適な 空の旅

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 パパとママのことだからあり得ないだろうけど、万が一、婚約者でもない男の人との同居を反対されても困るので、ふたりで相談して言わないことに決めた。  彼は「さ、行くか」と言い、わたしの機内持ち込み用のカバンを手に取った。 「行ってきます」  わたしはママに手を振って、出発ゲートに向かった。  手荷物検査を終えると、ベルナルドさんは言った。 「薫、ここからは日本語禁止だ」 「ひえ」  そ、それはまた、酷なことを。 「当然だろう? これからはフランス語で生活していかなげればならないんだぞ」  彼はわたしに一瞥をくれると、さっさとゲート目指して進んでいった。  厳しいお言葉。  でも、おっしゃる通りです。 「ま……Attendre(待って)」  フランス語は中学生のときから勉強しているし、この半年間は語学学校に通い、ラジオ講座も1日も欠かさず聞いていたけれど。   いきなりオール・フレンチ。  だ、大丈夫かな?  急に先行きが不安になってきた……
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