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「あそこの丸屋根見える?」 と、窓越しに左の方角を指さした。
「どこですか」
「ビルのあいだ、ほら、あそこ」
高速道路脇は大きな建物が建ち並んでいて、目的のものはなかなか見えない。
「あれがサクレクール寺院の屋根だよ」
「わ、本当ですか?」
一瞬で目が覚めた。
サクレクール寺院と聞いて、がぜん気分が上がった。
わたしはリムジンの小さな窓にへばりつき、じっと外を眺めた。
「あ、見えた。あれですよね。わーすごい。本物だ」
そんなわたしの様子を見て、ベルナルドさんはくすくす笑ってる。
「本当に、私の予想どおりの反応をしてくれるね、薫は」
「だって、サクレクール寺院ですよ。憧れのモンマルトルの」
「まだほんの入り口だ。市内に入ったら歴史的な建物だらけだぞ」
「わー、そうですよね。どうしよう。興奮しすぎて倒れるかも」
高速道路を降り、車は市内へ。
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