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「いや。私が一緒に行ってみたいんだよ。薫がはじめてエッフェル塔とご対面するとき、どんな顔をするのか、ぜひ見てみたくてね」
思わず振り向いて、彼の顔を見てしまう。
目を細めてこっちを見ているまなざしはなぜか、とても優しい。
いつものからかい口調のベルナルドさんとギャップがありすぎて。
なんか調子が狂って、鼓動がせわしなくなってくる。
いや、この動悸はシャンパンの酔いが回ったせいだ。
そう思っておくことにしよう。
そうこうするうち、パリの中心部の、ある建物の前でリムジンは音もなく停車した。
「さて、着いたぞ」
「えっ、ここ? なんで?」
着いたところは、アーチが整然と並び、白い日よけが印象的なホテルの車寄せ。
ここって……
『オテル・リッツ』じゃない!?
言わずと知れた、長い歴史を誇る、パリ最高級ホテルのうちのひとつの。
「ボンソワール、マドモアゼル」
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