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紺色の制服のベルボーイが車のドアを開けてくれた。
「えっ、てっきりアパルトマンに行くもんだと思ってたから」
「ああ、前に私が住んでいたところに入る予定なんだが、水回りのリフォームが間に合わなくてね。とりあえずの住まいはここ」
「とりあえずって……」
わたしは絶句した。
「中心部だから仕事に行くにも便利なんだよ。ああ、心配しなくてもちゃんと別室を取ってある」
そんなことじゃなくて。
いや、それも大事なことだけど。
一泊いくらするんだろう。
彼のことだから、当然スイートルームだよね。
30万、いや、50万ぐらい?
しばらくここに滞在って言ったよね。
長期で割引が利くとしても……
だめだ。
計算しようとしたら頭がフリーズした。
自分のことを〝お嬢様〟だのなんだの、と言ってたことが恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
さすが世界トップ5に名を連ねる大富豪。
レベルが段違い。
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