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そうだ。
「フリ」はふたりしか知らない話。
わたしは彼の「婚約者」なのだ。
だからホテルのスタッフもあれほど丁重に扱ってくれるのか。
「はい。では……ルイ」
「よし。それでいい」
彼はわたしの頭を撫でてくる。
飼い犬をかまうような仕草で。
見上げると、危うさなんて微塵もない、ただ優しいだけの視線。
曲がりなりにも、ホテルの部屋でふたりっきりなのに。
彼にとってのわたしは、ガキ以外の何者でもない。
言葉や態度で、そのことをイヤというほど教えてくれる。
うん。よーくわかってますって。そんなこと。
でも、ちょっとだけ、胸の辺りがモヤモヤするのはなんでだろう?
ひとの気も知らずに、ルイはテーブルの上のカップ麺のフタを上げて、匂いを嗅ぐ。
「うーん。食欲をそそる匂いだ。さ、食べよう。麺が伸びるぞ」
「はーい。 いただきます」
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