3・この、ほのかな甘酸っぱさって……

5/13
前へ
/212ページ
次へ
 結構、執念深いな。   「さて、行かなければ。薫はゆっくり食べていきなさい」 「は……クシュン」  返事をしようとしたら、くしゃみが出た。 「風邪をひいたのか?」 「うーん、平気だと思いますけど。花粉症かな? 少し頭が重いし。でも、そう言われると、ちょっと寒気も」  ルイはテーブルを回って、わたしの目の前に立った。  身をかがめた。  顔が近づいてくる。  そして、片手でわたしの後頭部を支えて、額を合わせた。    えっ? 「うん……少し熱いような気もするが……今日はちゃんと部屋で休んでおけよ。じゃあ、行ってくる」  そういって、時計を気にしながら出かけていった。    ぽけーっとしてしまった。  接近してきた、彼の美しい顔の残像が消えない。  まだ額に感触も残っている。    なんだか……  急に、顔がほてってきた気がする。  ルイのせいだ、きっと。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1415人が本棚に入れています
本棚に追加