3・この、ほのかな甘酸っぱさって……

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  「ルイ……」  彼はわたしの額に、濡らしたタオルをのせてくれていた。 「冷たくて気持ちいい……」 「具合はどうだ? 電話をかけても出ないから心配になって、マスターキーで開けてもらった」 「もう……大丈夫です。よく眠ったから……」  声がかすれている。喉も痛い。 「やはり、無理しすぎて疲れが出たんだろう。医者を呼んだから入ってもらうが、いいか?」 「すみません……ご迷惑をおかけして」  あーあ。  また株を下げちゃった。  張り切りすぎて、風邪ひいて、熱出すなんて。  これじゃ、子供(ガキ)って言われても、まるっきり反論できない。  お医者さんの診断は風邪とのこと。  扁桃腺がだいぶ腫れているが、薬を飲んで寝ていれば治るだろうと。  念のため、インフルエンザの検査もしてくれたが陰性だった。  医者が帰ってからも、ルイは自分の部屋に戻らず、傍についていてくれた。
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