3・この、ほのかな甘酸っぱさって……

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「今、薬をもらいに行かせている。なにか食べたいものはないか?」 「食欲はぜんぜん。あ、すみません、じゃあ、ミネラルウォーターをいただけますか」 「ああ」  ルイは冷蔵庫からペットボトルを出し、コップに注いで持ってきた。  わたしはヘッドレストにもたれた。  起きあがると頭がガンガンする。  でも、水は美味しかった。  からからの喉を潤してくれた。 「おいしい……」 「そうだ、いいこと思いついたよ」  ルイはすぐそばの電話でフロントに何か頼んだ。  でも、早すぎて何を言っているのか聞き取れなかった。 「横になっておけよ。私には構わなくていいから」    それからしばらく、彼は窓際のソファーに座って、スマホをいじっていた。 「ルイ……あの、ありがとうございました。風邪がうつるといけないので、もう部屋に戻って」  わたしが声をかけると、ルイは立ち上がり、ベッドのそばまで歩いてきた。
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