1・百年目の約束

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 とうとうパパが、大きなお腹を揺らしながらやってきてしまった。 「いやあ、とんだところを……面目ない」 「いや、なかなかイキのいいお嬢さんですね」  なにが〝イキのいい〟よ!  魚じゃあるまいし。  なんか、むかつく、この男。  あーあ、損した。  イケボのイケメンだなんて、ちょっと、ときめいたりして。 ***  ほんとに最悪。  ぜったい厄日だ。今日は。  と、不貞腐れているわたしは久世薫、二十歳。  短大のライフデザイン科2年生。  家は戦前から続く、呉服を扱う老舗織物問屋。  父方の祖母は華族の血を引く名門家系。  まあ、一応、〝お嬢様〟ってことになるのかな、世間的には。 「薫、むくれてないで、ちゃんとご挨拶なさい」  ママがわたしをたしなめる。    知らないよ! 「いや、ひとり娘なもので、ついつい甘やかしまして」  パパが頭を掻きながら、そんなことを言ってる。
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