1・百年目の約束

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 その男は何も言わず、ただ唇の端に微笑を浮かべているだけ。  うわっ、やな感じ。  ぜったい性格悪いよ、この男。  あーあ、もったいないなぁ。  思わず拝みたくなるような、極上のルックスなのに。    ここは、広大な庭園が有名な、都会のオアシスのようなラグジュアリーホテル。  その1階にある、見ごろの紅葉が一望できる料亭の個室。  目の前に座っている、この男の名前はルイ・ベルナルド。  れっきとしたフランス人だそうだ。  数えて3代前、彼の曽祖父に嫁いだのが日本人女性だったそうで、彼の黒髪は隔世遺伝らしい。 「日本語がとてもお上手ですわね、ムッシュー・ベルナルド」 「ルイとお呼びください、マダム」  ママったら、たったそれだけのことで、顔を赤らめてる。  イケメンにめちゃめちゃ弱いんだから。 「日本に来て、もうかれこれ5年になりますので」
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