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確かに嫁は風邪をひいて、今現在自分の部屋で寝ている。
クリスマスを二週間後に控えて、自分は準備が出来ないからと、私は幸之助の世話も併せてよろしく頼まれているのだ。
幸之助はああ言うが、もちろん私は嫁のことが心配だし、ちゃんと食事の用意や洗濯もしている。そのうえでのクリスマス準備で、今年は私にとって特別なクリスマスになるぞと覚悟すると同時に、楽しみと不安を入り混じらせていた所だ。そこにあの息子の言動…。
私はうろたえて、嫁の部屋に向かった。
「具合どう?あ、ごめん寝てた?」
「起きてるけど、なに?そろそろ夕飯でしょ?」
「あ、うん、判ってる。準備してるとこ」
嫁は寝返りを打って私の方へ体を向けた。
「クリスマスケーキ、電話してくれた?」
「あ、忘れてた…」
「もう。予約、明日までなんだからね、絶対してね」
「判ってる、判ってる。ちゃんとするよ。ねえ、それよりさ、幸之助、サンタクロース信じてないみたいなんだけど、君、なんか言った?」
「はあ?」
痛い頭をさらに痛くさせて何なの、と言いたげな表情で嫁は額を抑えると、体を仰向けに戻して言う。
「コウはまだ五歳よ。信じてるに決まってるじゃない。何が欲しいって?」
「その、聞いたんだけどさ、何が欲しいか、でも、サンタクロースなんかもう死んでるって言うんだ」
「あのねぇ、人が寝込んでる時につまんない冗談言いにこないでよ。私、おかゆ食べたい。よろしく」
嫁は鬱陶しそうにそう言いながらパサッと布団を頭からかぶって、会話は終了してしまった。
そんな事言っても、サンタを信じてない幸之助にどうやって「サンタさんからのプレゼント」を渡したらいい?
私は悩みながらキッチンへと歩く。
そうそう、ケーキ屋に電話。
六時前だからまだ間に合うはず。と、電話を見てみるといつの間にか友人からの着信が入っていた。私はそちらの電話にかけた。正月休みはいつからだという特に緊急性のない話しで、ついでに私は、嫁さんが風邪ひいて大忙しだと少々大げさに話してみせた。
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