大人は子供をだましたい

　とりあえず私は先に出来たお粥を妻のもとへ運び、その後カレーを仕上げて二つのカレー皿に次ぎ分け、幸之助と二人、夕食を始めた。
　実のところ、幸之助と二人だけで何かをしたり会話をしたりというのは滅多にない事だった。
　二人で夏休みや連休の計画を立てるなんて事はついぞした事がない。幸之助との会話は大抵の場合家族三人でするものだった。
　そうだ。
　それで何か妙に緊張してしまうのだ。
　しかも、子供らしからぬ事を急に言うものだから。