この選択肢から始まること。

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いつもの夕暮れ時。 学校から帰る生徒と一緒に私も帰路に着く。 私は部活もしていないのに、帰る頃にはいつも夕方だ。 何をしているわけでもないが、帰ってもする事がない。 家にも誰もいやしないので、早く帰ることも馬鹿馬鹿しい。 私の家も学校から歩いて20分くらいと、普通に近い所に住んでいる。 だから、先生や他の生徒とも良く会う。 だけど友達もいない私には挨拶をする程度で、他にも何かすることもなかった。 そして、いつもみたいに歩いていると後ろから悲鳴と物凄い音がした瞬間、私は空を舞った。 『えっ?何これ。』 私が思ったことはこれだけ。 そして、私の意識は薄れていった。 私が次に意識を取り戻した時には何やら騒がしくなっていた。 それも私の下でだ。 『えっ?何これ?』 意識が飛ぶ前と同じ事を思った瞬間私は悟った。 なぜなら。 『あっあれは私だ。そうか車に跳ねられて死んだのか。』 そう、物凄い音は車が私目掛けて突っ込んで来た音だったのだ。 車の故障か、運転ミスか分からないが見事に私を跳ねて止まったみたいだ。 『あー、死んだか私。別にいいんだけど。短い人生だったな。』 『君はそれで良いのかな?』 私の独り言に誰が答えた。 私は声のする方へと顔を向けると、そこには小さな猫がいた。 白と茶と黒の三毛猫だ。 『今の声って、あなた?』 『そだよ。僕だよ。もう一度聞くね。君はこのまま死んでも良いのかな?』 猫が喋っている。 まぁ、死んでいるんだから喋る猫がいてもいいのかな。 私は深く考えるのを辞めて、私は質問に素直に答えることにした。 『私は別に死んでも良いのかなって思える人生しか送ってないし、悲しむ人もいないよ。だから私自身も何も思わない。』 『ふうん。それは何でかな?その答えは君自身が出したの?それとも誰かが君に与えたのかな?』 『少なくとも私自身・・ではないかな。親や周りの人が私に対しての結果だから出た答え?だと思う。言われてみれば、私自身は何も思わない様にしていただけ。』 『じゃあ、最後にもう一度聞くね。君はこのまま死んでも良いのかな?』 『嫌だ!』 私は猫に言われて初めて思った。 私は何も感じなくなっていて、何も望まなかっただけなのだと。 今になって思う。 『私は生きていたい!本当はやりたい事もたくさんあったと思う!』 『それは君の本心だね。』 『自覚はないけど、私が今思う気持ちではあるよ!』 『じゃあ、決まりだね。君をこれから素敵な所に連れて行く。』 『素敵な所?でも私はもう死んでいるんだよね。』 『大丈夫、問題はないよ。それに君はもしこのまま生き返ったとして、また同じ人生を歩みたいのかな?』 『同じ人生・・・それは嫌だ。あんな何も無い所にはいたくない!』 私は生まれて初めて、私の思いを言葉にした様に思う。 『だからさ。僕が君を素敵な所に連れて行くよ。』 猫はそう言い放つと、私の襟を加えて空高く飛び跳ねた! 雲を越えて宇宙まで行くと思った瞬間、眩しい光に包まれた。
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