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「大丈夫って、なにが?」
「だって、やっぱすごい厳しそうじゃん。雰囲気キツいし、なんか怖いし、今だってもうお昼休みなのに先にやれとか」
「それは……」
それは、当然じゃないのか?
時任さんはたぶん、自分の昼休みの前に、もしくは昼休みを削って俺の報告書のチェックをする。その上で、午後イチで課長に提出させる気だろう。それが一番、ロスが少ないからだ。そしてその評価を上からもらえるのは、提出者である俺になる。
特別な報告書ではない。日常的に発生する、よくある仕事のひとつ。そうだとしても、積み重なっていく評価を蔑ろにする奴は、仕事ができないと見られていく。
俺の報告書のチェックは時任さんの直接の仕事ではない。立場的に、教育係のようになっているからやってくれているだけで、時任さんが見てくれないなら、直で提出した報告書に課長から直で多量のダメ出しを食らうだけだ。
時任さんは全部、分かっている。分かった上での、今の言葉だ。
これが、優しさでなくて、なんだ
後でいいよと笑って見逃してくれるばかりが、優しさなわけじゃないんだよ
何も知らないまま、知ろうともしないまま、分かったような批評をすんなよ
「あれは俺の仕事で、時任さんは善意で見てくれるだけだから」
こんな説明をする必要もない、と思いながら、それでも伝わればいいと思って丁寧に答えたけど、でもやっぱり伝わらなかった。
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