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「ねぇ。的場くん、何か言って……なんでもいいから何か……」
「何か、て」
「無言だと怖いよ……何でもいいから、怖い……」
彼女の手が自らの顔を覆い、それでも奥を突かれるたびにくぐもった声がもれて、それでようやく少し、我にかえった。
「あ……ごめん…なさい」
無言……?そんな無言だったのか?
「あー………すみません、すげー余裕、なくて」
必死で動きを止める。大きく息を吸って、止めて、ゆっくり、ゆっくり、吐き出す。
「ガチで、理性って飛ぶんですね……俺、好きな人とすんの初めてで……初恋は、失恋したから。なんか、頭の中、うわってなってて」
「え、え、そうなの?」
「そうなんですよ……だからなんかもう、わけ分かんない、あー…すっげー気持ちいい……」
時任さんにも本当はそう思って欲しかったけれど、さすがにこの勝手なセックスでは無理だろう。
「ほんとすみません。次からはもう少し、ちゃんとできると思うから……」
情けなくなって素直に項垂れる。
仕方ないなぁ、じゃあ、次に期待してます、と時任さんはこぼれるみたいに笑った。
「もう、動いていいですか?」
「ん……ねぇ、的場くん、気持ちいい?」
「はい……すごく。俺はちょっと、バカになりそうです」
「なによそれ」
余裕を見せる彼女の下唇を薄く噛む。
「あっ、んんっ」
途端に目を閉じて、喘ぐように上擦ってくる顎を捕まえて、割り込むように口付ける。
唇の他にも、もっと感じてくれるところをたくさん見つけなくちゃ。
それで、もっと俺に夢中にさせるようなセックスにはやく辿り着こう、とか思いながら。
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