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後日、会ってもらいたい人がいる、といきなり言われたので、ご両親との対面だと思ってさすが婚活女子は展開がすごい早いなと身構えたのに、相手は例の親友だという。 指定されたのは繁華街のイタリアンバル、時刻は夜7時。普通に飲み会のセッティングである。 「あの子が張り切って予約してたから、たぶん結構美味しい店だと思うよ」 時任さんはなんてことなくそんなことを言うけれど、俺の方はそうもいかない。 これまで聞いてきた時任さんの親友の情報を総括すると……大学の同期ってことは、有名国立の法学部卒で、ちょっと変わっていてすごい彼氏がいて、酒豪で、色々ダメで、時任さんのことを溺愛している人。 ……全く想像がつかない。どんな人なんだそれ。 考えれば考えるほど強烈なキャラが浮かんでしまって、顔合わせにはすごく緊張して挑んだのだけれど。 実際やってきたのは、時任さんよりは背の高い、手足の長い伸び伸びとした雰囲気の人で、少し茶色い髪がサラサラと揺れる、普通に綺麗な人だった。 この人が、色々ダメな、酒豪? いまいち腑に落ちなくて、まじまじと見てしまっていたら、その人はにっこりと笑顔を浮かべた。 けど、なんか目が笑ってなかった。怖い。 「こちら的場くん。一応、結婚前提の彼氏。で、そっちが亜紀。大学時代からの友達」 ごくごくあっさりとした短い紹介に、その人はやや不満げに口を出す。
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