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次に料理が来たタイミングで片山さんが2杯目を頼む。 気まずいのか、もくもくと料理を取り分ける彼女を、時任さんは頬杖をついたまま見ている。 「反対されるとは思わなかった」 「反対なんてしてません」 「だって殺気立ってるから」 「ちょっとびっくりしただけ……ごめん、もう落ち着きました」 「年末に亜紀がぶっ倒れた時、残業引き受けてくれたの誰だと思ってんの」 ああ、そういやそんなことあったなぁ 小皿を差し出しながら、目を上げた片山さんがもう一度、ごめんと謝る。 それから俺の方にも、先程の勢いは幻だったのかと思うほど、大人しくしょげた様子で小さく頭を下げた。 あー、なんか、なんだろ、この人……素直なのかな? 「その節はどうも……」 「いえ、大丈夫でしたか?」 「あの時は、高熱で、死にそうだったんです……」 やはり気まずいのか、軽く拗ねたようにまた目を逸らす仕草は、想定外に目を引くものがあった。 なんかちょっとだけ分かった気がした。時任さんが、この人のことを大事に可愛がってる理由。
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