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髪と同じく、そして、時任さんとは対照的に少し色素の薄い感じのする目が、崩れるように垂れる。
少しは酔っているのだろうか。
この人は時任さんの親友だし全然知らない人だし全然好きじゃない、けど、緩んだ視線が妙に色っぽく、不覚にも少しドキドキした。
「的場くん?」
「え?あ、はい」
「夏菜子ちゃんてさー、可愛いし、賢いし、美人だし、ほんともう、最っ高だよねっ!私、もうすっごい好き!」
片山さんが唐突にまた、歯の浮くような台詞をとても嬉しそうに衒いなく言う。
ついつい釣られるように頷いたのを確認して、彼女はひときわ愛おしそうに、目を細めた。
強烈な愛情を向けられているというのに慣れきっているのか、時任さんは照れる気配もなく、はいはい、と雑にあしらいながら、手際よく料理を取り分けていく。
「的場くん、これ食べるよね」
「あ、食べます」
「はいどうぞ。てか、足りないよね?なんか追加する?」
「あ、俺、がつっと飯っぽいのがいいです」
「飯ね……さすが若いわね……」
時任さんがメニューに手を伸ばし、パラパラと物色し始める。
「亜紀は?」
「私、生ハム」
「好きだねぇ」
「うん」
時任さんの前では、いつのまにか上機嫌になったらしい彼女の親友が、ゆるゆる微かに揺れながら、身を乗り出して、楽しそうにメニューを覗き込んでいる。
輪郭に手を伸ばす Fin
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