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大学に入って、なんの因果か演劇サークルに入ってしまった。野球は高校まででやめた。実力的にも大学の体育会野球部に属せるものではなかったし、かといって草野球のようなサークルに今更入る気にもなれなかった。 新歓の時期にふらふらとキャンパスをさまよっていたら数限りなく勧誘を受けた中で、なぜそこだったのか、理由はよく分からないし、もしかしたら理由も何もないのかも知れない。 とにかく、バサバサと手の中に積み重なる多種多様なチラシの中の1枚。 のちに俺が卒業まで所属することとなる演劇サークルのチラシは、黄色い紙に荒い印刷で色々と書いてあったけど、左下の隅にデカデカと、『大道具係、熱烈歓迎』と書いてあった。 役者として舞台に立つ気などさらさらなかったけれど、裏方としての活動には妙に興味を惹かれた。今振り返ってみれば、当時から、表舞台に立つよりもバックヤードを仕切りたいとか、そういう希望が強かったんだろうと思う。 チラシにあった日時にひとりで集合場所に行き、そのまま新歓コンパに雪崩込み、そのまま所属することとなった。 訳が分からない感じの新歓コンパをへて、結局新入生として登録されたのは15人ほど。高校の演劇部だった奴も多く、ほとんどが役者としてサークルに入ってきた中、大道具オンリー志望の俺は珍しかった。にもかかわらず、数ヶ月経つうちに、先輩らにしつこく役者の方もやらないかと誘われて困った。
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