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鋭角な人だ、と、その人を見たときにまず思った。 だけど、尖っているというわけでもなくて……ああだから、鋭角というのは適切じゃないかも。 そうじゃなくて…… そう、なんていうか、エッジが効いている、っていうのかな。 そういう人に、久しぶりに出会った。 この人のことを、俺はそのうち好きになるのだろうか……? 初対面にも関わらず、そう思ったことを、憶えている。 入社3年目で部署異動、その人、時任さんのいる法務に移ってきた、4月1日、まさに初日の話。 時任(ときとう)夏菜子(かなこ) 入社5年目 きつくも柔らかくもないフラットな視線を飛ばしてきたその人は、目が合うとやはり笑いもせずに、でもことさら避けることもなく、しっかり目を合わせて目礼してきた。 そしてすぐに逸らした。特には興味がないと、はっきりとわかるスピードで。 「的場(まとば)くんてさ」 後ろから肩を叩きながら声をかけられた。 肩越しに振り向く……とそこに見えたのはシャツの襟で、さらに振り仰ぐことになった。 うっわ、でっか!ガタイいいし! はい、と返事をしながら、入れ立ての記憶を辿る。 この人はえーと……峰岸(みねぎし)さん、入社7年目。 だからたぶん、俺より4つくらい年上。
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